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2013-05-23

小説の感想(有限と微小のパン/森博嗣)


有限と微小のパン/森博嗣

※ネタバレ注意

感想

S&Mシリーズ10作目にして最終作。

約850ページですか。

厚いですな。

本の構成

序盤からガシガシと攻めてきて、クライマックス感がすごかった。

今までの人物がどんどん登場してきて、それが1つにまとまっていく感じ。

最初から勢いがあって850ページを苦にさせない面白さでした。

事件を解くヒント

勝手にヒントだと思ってるのは下記の二点です。

料理に味つけをするように、道徳と装飾を仮想構築しているだけ。

「有限と微小のパン」P.139より

「公道じゃないから、良いでしょう?」

「有限と微小のパン」P.382より

まず、ずっと強調されていた「装飾」という言葉。

これは虚構や作り物だったということを表している。

つまり、事件は作り物の装飾だったということを意図しているように思える。

次に、公道じゃないという言葉。

これはつまり私有地ということ。

私有地の中であれば警察の格好をして歩きまわっても大丈夫だろう。

この二点がお芝居だったことを示唆していると感じたポイントです。

作中で気に入っている表現

良い意見だ

「良い意見だ」国枝桃子が呟く。
「意見に良いも悪いもないだろう」犀川が言う。
「訂正します。私の思っていたことに近い、という意味」国枝がすぐに言い直した。

「有限と微小のパン」P.682より

良い、とか、悪い、とか、自分でよく決めつけてしまう。

でもそれは自分の思ってることに近いか遠いかそれだけなんだ、ということを簡潔に示してくれたやりとり。

似たような考えには及んでいたが、自分の中できれいに考えをまとめることができていなかった。

神様、よくわかりませんでした

「よくわかりません」
「そう……、それが、最後の言葉に相応しい」
「最後の言葉?」
「その言葉こそ、人類の墓標に刻まれるべき一言です。神様、よくわかりませんでした……ってね」

「有限と微小のパン」P.827より

この一言があったから、この作品は今まで読んだ中で最高のものだと思えた。

たしかにそうだ。

よくわからないものですよね。

真賀田四季について

実際の居所

真賀田博士は冒頭で塙理生哉と握手をしている。

この握手は物理的なものだったのかどうか。

実際に真賀田博士はダークルームにいたのかどうか。

食事はただのカモフラージュだったのだろうか。

個人的には実際はいなかったと考える。

しかしそうすると、冒頭で塙理生哉が握手を申し出たのが少々滑稽に思えてしまう。

時系列

2月:儀同世津子の隣に越してくる。

9月:ダークルームを使用し始める。

10月:儀同世津子の出産。

12月:瀬戸千依に育児をよく手伝ってもらっているような表現。

犀川

真賀田博士は恋をしたことがないと言っていたが、犀川先生に抱いてる感情がそうではないのだろうか。

わざわざ犀川に会いに行ったり、犀川がタバコを吸うと言ったらそれを笑ったり。

すごくお似合いに思えます。

瀬戸千依

これもきっと環境に応じて真賀田博士が作った人格の1つでしょう。

そして犀川にわざと遭遇。

犀川はなぜこの時気付かなかった。

他人に興味はなさそうだから仕方ないけど、声とかで気づけなかったものか。

そして毎日部屋から出勤していたという瀬戸千依の旦那様はナノクラフトが用意したのだろうか。

まとめ

もっと早くに読みたかった。

リアルタイムで読めたらもっと面白かっただろうな。

森博嗣さんの作品は今後も読んでいきたい。